メタバースという言葉をニュースや書店、新聞、あらゆるところで耳にするけど、
「どの説明も抽象的でふわっとしていて、いまいちピンとこないな・・・」
と思っていませんか?
何となく「新しい概念」で「3Dの仮想空間でアバターになっていろいろできるんだな」ということは分かった。けどもう少し具体的に知りたい!定義を教えて!という方が多いのではないでしょうか。
結論、メタバースに「これ!」という決まった定義はありません。ただ、各方面のメタバース専門家が、それぞれメタバースを構成する要素(条件)を提示してメタバースを定義づけています。
今回は、それぞれの専門家が提唱するメタバースの定義を見ていきます。さらに、どの定義にも「共通する要素(条件)」は何かを分析します。
より深く、メタバースとは何か?を知りたい方におすすめです!
3名の専門家によるメタバースの定義
はじめに、それぞれの専門家が提唱している定義を見ていきます。
1.米ベンチャー投資家Matthew Ball氏のメタバース7つの条件
①永続性がある(常に時間が流れている状態)
②同時多発性・ライブ性
③同時参加人数の上限なし
④完全に機能した経済性
⑤デジタル世界と物理世界どちらにもまたがる
⑥相互運用性(プラットフォームの垣根がない)
⑦個人や企業が多くのコンテンツや体験を提供する
こちらは米ベンチャー投資家Matthew Ball氏が提唱するメタバースの条件です。
④完全に機能した経済性や⑥プラットフォームの垣根を超えた相互運用性を要素として挙げていることから、メタバースは、単なる1つのプラットフォームやサービスでは完結せず、メタバースという大きな「一つの世界」のことを指していると言えるかと思います。
2.RobloxのCEOが考えるメタバース8つの要素
メタバースプラットフォームRobloxのCEO・Dave Baszucki氏が考える8つのメタバースの要素はこちらです。
①アバターを通したアイデンティティ(Identity)
②友達ができ、交流ができる(Friends)
③没入体験ができる(Immersive)
④どこからでもログインでき、通信遅延も少ない(Low Friction)
⑤コンテンツの多様性(Variety)
⑥瞬時にどこへでも行ける(Anywhere)
⑦活発な経済(Economy)
⑧文明のあるデジタル社会(Civility)
Robloxはオンラインゲームを主とするプラットフォームですが、アバターを自由にカスタマイズしたり、友達とコミュニケーションが取れる場としても人気な3D仮想空間です。
サービスからも伺える通り、②の友達とコミュニケションすることができるという要素が含まれることが印象的です。
ただ、ここには他のプラットフォームを超えてユーザーが自由に行き来できるような「相互運用性」という要素は見受けられません。
3.バーチャル美少女ねむ氏のメタバースに必要な7要件
話題の『メタバース進化論』の著者であり、バーチャルキャラクターで動画配信をするVTuberの先駆者・バーチャル美少女ねむ氏が著書の中で定義するメタバース7要件はこちらです。
①空間性(三次元の空間の広がりのある世界) ②自己同一性(自分のアイデンティティを投影した唯一無二の自由なアバターの姿で存在できる世界) ③大規模同時接続性(大量のユーザーがリアルタイムに同じ場所に集まることのできる世界) ④創造性(プラットフォームによりコンテンツが提供されるだけでなく、ユーザー自身が自由にコンテンツを持ち込んだり創造できる世界) ⑤経済性(ユーザー同士でコンテンツ・サービス・お金を交換でき、現実と同じように経済活動をして暮らしていける世界) ⑥アクセス性(スマートフォン・PC・AR/VRなど、目的に応じて最適なアクセス手段を選ぶ事ができ、物理現実と仮想現実が垣根なく繋がる世界) ⑦没入性(アクセス手段の一つとしてAR/VRなどの没入手段が用意されており、まるで実際にその世界にいるかのような没入感のある充実した体験ができる世界) 『メタバース進化論』引用
こちらの7要件には入っていませんが、著書の中では「⑧オープン性(相互運用性)」にも言及しています。「相互運用性」が定義に加わると、一人目で紹介したMatthew Ball氏の定義とほとんど同じと言えるかと思います。
共通することが多い要素は7つ
それぞれの専門家が出している「メタバースを構成する要素」で、共通する項目が多い順に並べてみました。
以下では2つ以上共通する項目を簡単に解説していきます。
☆が共通する数を表しています。
経済性(☆☆☆)
経済性というのがメタバースを定義する上で満場一致の要素のようです。
どこまでの経済性かと言うと、
- 完全に機能した経済性
- ユーザー同士でコンテンツ・サービス・お金を交換でき、現実と同じように経済活動をして暮らしていける世界
など、3名ともメタバースの中だけで生活ができるくらいの経済性を指しています。
同時性・ライブ性(☆☆)
ユーザーがリアルタイムで同時に参加することができることです。
複数の場所でそれが同時に発生すると「同時多発性」とも言えます。
大規模性(☆☆)
参加するユーザーの制限なく、大規模の同時接続が可能なことです。
現在、サービスによって数は異なりますが、一度に同時接続できる人数には限りがあります。
これは、今後6Gなどの時代になり通信技術の進歩によって可能になってくると期待されています。
ユーザー(個人や企業)によるコンテンツの提供(☆☆)
プラットフォームの運営側が提供するコンテンツや体験だけではなく、ユーザー自身がコンテンツを自由に創造・提供できることです。
現在メタバースと呼ばれるプラットフォームには、ユーザーがコンテンツを創作しやすいものもあれば、まだまだ難易度が高く一部のクリエイターしか創作できないものもあります。
アバターを通したアイデンティティの確立(☆☆)
アバターを通して自分のアイデンティティを表現できることです。
これを実現するには、アバターは好きなようにカスタマイズできる必要があります。プラットフォーム側が提供するアバターだけではなく、自分の好きな姿、なりたい姿になれるよう、どんなアバターにもできることが必要ということですね。
没入性(☆☆)
没入性とは物理世界のことを忘れ、あたかもそこにいるかのように感じることです。
VRゴーグルなどのVR・AR機器を使ってアクセスすることができ、没入体験ができるという点が要素として挙げられています。
ここで注意したいのは、メタバースと呼ぶには「絶対にVR機器を使わないといけない」という言及はありません。「VR機器を使ってアクセスができる」というだけで、ユーザーはアクセスするデバイスを選ぶことができます。
どこからでもアクセス可(☆☆)
メタバースへは、どのデバイスからでもアクセスが可能ということです。
既にあるメタバースと呼ばれるようなサービスでは、VRゴーグルだけでなくPCやスマホからログインができるものもあります。
【3名のメタバースの定義の共通する要素まとめ】
共通する要素 | Matthew Ball | Dave Baszucki(Roblox) | バーチャル美少女ねむ | 共通する数 |
---|---|---|---|---|
経済性 | ④完全に機能した経済性 | ⑦活発な経済(Economy) | ⑤経済性 | 3 |
同時性 | ②同時性・ライブ性 | ③大規模同時接続性 | 2 | |
大規模性 | ③同時参加人数の上限なし | ③大規模同時接続性 | 2 | |
デジタル・物理両方 | ⑤デジタル世界と物理世界どちらにもまたがる | ⑥アクセス性 | 2 | |
ユーザー(個人や企業)によるコンテンツの提供 | ⑦個人や企業が多くのコンテンツや体験を提供する | ④創造性 | 2 | |
アバターを通したアイデンティティ | ①アバターを通してアイデンティティを持つこと(Identity) | ②自己同一性 | 2 | |
没入性 | ③没入体験ができる(Immersive) | ⑦没入性 | 2 | |
どこからでもアクセス可 | ④どこからでもログインでき、通信遅延も少ない(Low Friction) | ⑥アクセス性 | 2 | |
①永続性がある | 1 | |||
⑥相互運用性 | 1 | |||
②友達ができ、交流ができる(Friends) | 1 | |||
⑤コンテンツの多様性(Variety) | 1 | |||
⑥瞬時にどこへでも行ける(Anywhere) | 1 | |||
⑧文明のあるデジタル社会(Civility) | 1 | |||
①空間性 | 1 |
議論が分かれる要素
メタバースの定義を論じる際、議論が分かれる要素が「相互運用性」です。
3名の専門家の中でも意見が分かれています。
「相互運用性」があるメタバースを「オープンメタバース」と呼び、プラットフォームの垣根を超えて、1つのアバターで自由にどこのプラットフォームへも行くことができます。反対に、「クローズドメタバース」と呼ばれるものは、アバターやアイテムがそのサービス内でしか使えず「相互運用性のない」メタバースを指します。
オープンメタバース(相互運用性のあるメタバース)を実現しようと思うと、ブロックチェーンやNFTの技術が必要不可欠になります。
これが、「メタバースにはブロックチェーンが必須だ」という意見と、「ブロックチェーン・NFTとメタバースは関係ない」という意見、2つの正反対意見がでてくる理由です。
まとめ
メタバースの定義は、明確に定まってはいませんが、専門家が提唱している定義がいくつかあります。
今回は、その中でも代表的な3名のメタバース専門家による定義をご紹介し、さらにそれぞれの定義で共通する要素を抽出してみました。
- メタバースという一つの大きな世界を目指している定義
- コミュニケーションプラットフォームという毛色が強いメタバースの定義
- 没入感やアバターによる「実世界と同じような体験」を強調している定義
など、さまざまでした。
また、その中で唯一共通していた点は「経済性」でした。メタバースの中でも実世界と同じような経済システムができていくことは、揺らぎない未来のようです。
メタバースについて理解が深まるお役に立ちましたら何よりです❣️
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